うつ病などの労災:休業(補償)給付と傷病手当金の違い・相談先

公開日

うつ病などの労災:休業(補償)給付と傷病手当金の違い・相談先

PR この記事には広告(アフィリエイト)のリンクがあります。広告の枠には「広告」と表示しています。

情報の基準日:2026年10月8日/下書き:AI、編集:社畜眼鏡 編集部。制度の最終判断は各窓口、医療の判断は主治医

今とてもつらいときは、この記事より先に相談先へ:#いのちSOS 0120-061-338(毎日24時間)、よりそいホットライン 0120-279-338(24時間。福島県から・050で始まるIP電話からは別の番号)

この記事の位置

この記事は、ピラー記事「仕事辞めたいけどお金がないときに、辞める前に確かめる制度5つと使う順番」の中で、仕事が原因でうつ病などになったときの労災保険を扱う記事です。業務外の病気やケガで休むときの傷病手当金は「うつ病で休むときの傷病手当金」、退職後の失業保険は「うつ病で退職したときの失業保険」、休んでいる間に必要なお金の計算は「生活防衛資金はいくら?」の記事に書いています。

まず押さえておきたい3行

  • 仕事が原因でうつ病などの精神障害になったときは、健康保険の傷病手当金ではなく、労災保険の休業(補償)給付の対象になり得ます。業務上・通勤災害による病気やケガは、傷病手当金の対象外だからです。
  • 精神障害が労災と認められるには、厚生労働省の認定基準にある3つの要件(対象となる精神障害を発病していること、発病前おおむね6か月の間に業務による強い心理的負荷が認められること、業務以外の心理的負荷や本人側の要因で発病したとは認められないこと)を、労働基準監督署が調査して判断します。診断書があれば自動的に決まるものではありません。
  • 労災の休業(補償)給付は休業4日目から給付基礎日額の60%+休業特別支給金20%、傷病手当金は4日目から、標準報酬月額をもとに計算する日額の約3分の2です。待期の3日間の扱い・請求先も違います。

この記事でわかること

  • 労災保険と傷病手当金、どちらの対象になるかの分かれ方
  • うつ病などの精神障害が労災と認められる3つの要件のあらまし
  • 休業(補償)給付の中身(支給条件・待期・金額・請求先・時効)
  • 休業(補償)給付と傷病手当金の違いの比較
  • 会社が協力してくれないときの対応・困ったときの相談先

同じ病気・ケガは、原因によって労災保険か傷病手当金に分かれる

病気やケガで働けなくなったときの保険は、原因によって分かれます。仕事が原因(業務災害・複数業務要因災害)または通勤が原因(通勤災害)であれば労災保険、それ以外の病気やケガであれば健康保険が対象です。

全国健康保険協会(協会けんぽ)は、傷病手当金の条件として「業務外の事由による病気やケガの療養のための休業であること」を挙げ、「業務上・通勤災害によるもの(労災保険の給付対象)…は支給対象外」と説明しています。よくある質問でも「業務上や通勤途中での病気やケガは労働災害保険の給付対象となりますので、労働基準監督署にご相談ください」と案内しています。

つまり、同じ病気・ケガでも、原因が業務上・通勤災害にあたるなら労災保険(この記事で扱う休業(補償)給付)、業務外なら傷病手当金が対象になります。

(出典:全国健康保険協会「傷病手当金について」、同「病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)|よくあるご質問」、厚生労働省「労災保険給付の概要」。確認日 2026年10月8日)

うつ病などの精神障害が労災と認められる要件

厚生労働省は、仕事によるストレス(業務による心理的負荷)が関係した精神障害について、仕事が主な原因と認められるかどうかの判断(労災認定)の基準として「心理的負荷による精神障害の認定基準」を定めています。労災認定のための要件は、次の3つです。

  1. 認定基準の対象となる精神障害を発病していること:ICD-10(疾病及び関連保健問題の国際統計分類第10回改訂版)第Ⅴ章「精神及び行動の障害」に分類される精神障害であること(認知症や頭部外傷などによる障害、アルコールや薬物による障害は除きます)。うつ病や急性ストレス反応などが代表的なものです。
  2. 発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること:労働基準監督署の調査に基づき、発病前おおむね6か月の間の業務による出来事や、続いていた状況について、厚生労働省の評価表で心理的負荷の強度が「強」と評価される場合です。極度の長時間労働など「特別な出来事」にあたると判断される場合は、心理的負荷を「強」と評価します。それ以外の出来事は、具体的な内容と出来事後の状況を含めて個々に評価されます。
  3. 業務以外の心理的負荷や個体側要因により発病したとは認められないこと:私生活でのストレス(離婚、金銭トラブルなど)や、本人のストレスへの反応しやすさ(既往の精神障害、アルコール依存状況など)が顕著にある場合は、どちらが発病の原因かを医学的に慎重に判断します。

この3つを満たすかどうかは、労働基準監督署が、会社・本人から提出された資料や聞き取りをもとに調査して判断します。心理的負荷の強度は、発病した本人がどう受け止めたかではなく、同種の労働者(職種・立場・年齢・経験などが似た人)が一般的にどう受け止めるかという観点で評価されます。認定基準に当てはまるかどうかは、働き方や出来事の具体的な事情によって個別に判断されます。評価表の全文や認定事例は、厚生労働省のパンフレット「精神障害の労災認定」で確認できます。

(出典:厚生労働省「精神障害の労災認定」。確認日 2026年10月8日)

労災と認められたら:休業(補償)給付の中身

支給される条件と待期の3日間

労災保険の休業(補償)給付は、次の3つの要件を満たす場合に、休業4日目から支給されます。

  1. 業務上の事由または通勤による負傷や疾病による療養のため
  2. 労働することができないため
  3. 賃金を受けていない

休業の初日から第3日目までを待期期間といいます。業務災害の場合、この待期期間について、事業主が労働基準法の規定に基づく休業補償(1日につき平均賃金の60%)を行うことになっています。ただし、複数業務要因災害・通勤災害の場合は、事業主の補償責任についての法令上の規定はありません。

(出典:厚生労働省「休業(補償)等給付 傷病(補償)等年金の請求手続」、労働基準法第76条、労働者災害補償保険法第14条。確認日 2026年10月8日)

金額:給付基礎日額の60%+特別支給金20%

支給額は、単一の事業場のみに使用されている労働者(単一事業労働者)の場合、次のとおりです。

  • 休業(補償)給付=(給付基礎日額の60%)×休業日数
  • 休業特別支給金=(給付基礎日額の20%)×休業日数

合わせると、給付基礎日額の実質80%相当が支給される形です。事業主が異なる複数の事業場で同時に働いている人(複数事業労働者)の場合は、それぞれの就業先の給付基礎日額に相当する額を合算した額が基準になります。

「給付基礎日額」は、原則として労働基準法の平均賃金に相当する額です。原則として、業務上または通勤による負傷などの原因となった事故が発生した日、または医師の診断によって疾病の発生が確定した日(賃金締切日が定められているときは、その直前の賃金締切日)の直前3か月間に支払われた賃金の総額(ボーナスや臨時の賃金を除く)を、その期間の暦日数で割った1日あたりの賃金額です。給付基礎日額は、賃金水準の変動に応じてスライド(増額・減額)する場合があります。また、療養開始後1年6か月を経過すると、年齢階層別の最低・最高限度額が適用されます。

通院のため所定労働時間の一部だけ休業した日は、給付基礎日額から実際に働いた分の賃金額を差し引いた額の60%が支給されます。

労働者災害補償保険法第14条は、休業補償給付について「労働者が業務上の負傷又は疾病による療養のため労働することができないために賃金を受けない日の第四日目から支給するものとし、その額は、一日につき給付基礎日額の百分の六十に相当する額とする」と定めています(特別支給金は別の制度によるものです)。

(出典:厚生労働省「休業(補償)等給付 傷病(補償)等年金の請求手続」、労働者災害補償保険法第14条。確認日 2026年10月8日)

請求先と時効

休業(補償)給付を請求するときは、「休業補償給付・複数事業労働者休業給付支給請求書」(様式第8号)などを、所轄の労働基準監督署長に提出します。休業が長期にわたる場合は、1か月ごとの請求が一般的です。休業特別支給金の申請は、原則として休業(補償)給付の請求と同時に行います。

休業(補償)給付は、療養のため労働することができず賃金を受けない日ごとに請求権が発生します。その翌日から2年を経過すると、時効により請求権が消滅します。期限内に請求書を提出した分については、請求権の時効の問題はなくなります。

会社が労災ではないと言って事業主証明などの手続きに協力的でない場合でも、労働者が自分で請求手続きを行って問題ありません。会社が事業主証明を拒否するなどやむを得ない場合は、事業主の証明がなくても請求書は受理されます。退職していたり、すでに会社がなくなっている場合でも請求できます(その場合、事業主や同僚の住所・氏名を聞かれることがあります)。

(出典:厚生労働省「休業(補償)等給付 傷病(補償)等年金の請求手続」、同「請求(申請)のできる保険給付等」。確認日 2026年10月8日)

1年6か月を超えても治っていないとき

療養開始後1年6か月を経過しても傷病が治っていない(治ゆ・症状固定していない)ときで、傷病の障害の程度が傷病等級に該当する場合は、傷病(補償)等年金に切り替わります。この支給・不支給の決定は所轄の労働基準監督署長の職権によって行われるため、請求手続きは不要です。ただし、療養開始後1年6か月を経過しても傷病が治っていないときは、その後1か月以内に「傷病の状態等に関する届」を提出します。また、療養開始後1年6か月を経過しても傷病等級の要件を満たしていない場合は、毎年1月分の休業(補償)給付を請求する際に「傷病の状態等に関する報告書」を併せて提出する必要があります。

労災保険における「治ったとき(治ゆ・症状固定)」とは、健康時の状態に完全に回復した状態だけを指すのではなく、傷病の症状が安定し、医学上一般に認められた医療を行っても、その医療効果が期待できなくなった状態をいいます。精神障害についても同様で、症状が現れなくなり通常の就労が可能な場合のほか、就労が可能な状態ではなくても治ゆ(症状固定)の状態にあると判断される場合があります。治ゆ後は、療養(補償)等給付や休業(補償)等給付は支給されません。

(出典:厚生労働省「休業(補償)等給付 傷病(補償)等年金の請求手続」、同「精神障害の労災認定」。確認日 2026年10月8日)

休業(補償)給付と傷病手当金の違い

同じ「働けなくなったときのお金」でも、労災保険の休業(補償)給付と健康保険の傷病手当金は、対象になる原因から金額の決まり方まで違います。

労災保険の休業(補償)給付 健康保険の傷病手当金
対象になる病気・ケガ 業務上または通勤による負傷・疾病 業務外の病気・ケガ
判断するところ 労働基準監督署 加入している健康保険(協会けんぽ・健康保険組合)
支給される条件 ①業務上または通勤による療養のため ②労働できない ③賃金を受けていない ①業務外の療養のため ②仕事に就けない ③連続3日を含み4日以上休業 ④給与の支払いがない(傷病手当金より少ない給与が出ているときは差額を支給)
待期3日間の扱い 業務災害の場合、事業主が労基法上の休業補償(平均賃金の60%)を支払う義務がある 待期中は健康保険からの支給はなく、有給休暇・公休日も待期に含められる
支給が始まる日 休業4日目から 4日目から
1日あたりの金額 給付基礎日額(原則、平均賃金に相当)の60%+休業特別支給金20% 標準報酬月額を基準にした額の30分の1×3分の2
支給が続く期間 治ゆ・症状固定までの、支給条件を満たす期間。1年6か月を超えても治っておらず傷病等級に該当すれば傷病(補償)等年金に切り替わる 同じ病気で通算1年6か月まで
請求先 所轄の労働基準監督署長 加入している健康保険の支部・窓口

(出典:厚生労働省「休業(補償)等給付 傷病(補償)等年金の請求手続」、同「労災保険給付の概要」、全国健康保険協会「傷病手当金について」、同「よくあるご質問」。確認日 2026年10月8日)

困ったときの相談先

  • 労災認定についての相談:最寄りの労働基準監督署、または都道府県労働局
  • 休業(補償)給付の請求:勤めている(勤めていた)事業場の所在地を管轄する労働基準監督署
  • 労災保険の一般的な質問:労災保険相談ダイヤル 0570-006031(8時30分〜17時15分。土日祝日・年末年始を除く。通話料がかかります)
  • 職場のトラブル全般(ハラスメント・解雇・労働条件など)の相談:総合労働相談コーナー。全国378か所(各都道府県労働局・労働基準監督署内など)に設置され、予約不要・利用無料で、面談または電話で専門の相談員が対応します。土曜・日曜・祝日・年末年始(12月29日〜1月3日)は閉庁です。
  • 傷病手当金の要件・申請書類:加入している健康保険(協会けんぽの支部、または勤務先の健康保険組合)
  • 生活費が苦しい・今後の生活が不安という相談:お住まいの市区町村の生活困窮者自立相談支援機関
  • 心のつらさについて:厚生労働省「まもろうよ こころ」に、電話・SNSで相談できる窓口の一覧があります。#いのちSOS(0120-061-338・毎日24時間)、よりそいホットライン(0120-279-338・24時間。福島県から・050で始まるIP電話からは別の番号)など。

広告

Amazonの商品ページの紹介文と目次をもとに選んだ本です。制度の数字は発行時点のものなので、最新の額は記事の出典と各窓口で確かめてください。(労働者災害補償保険の項目があります)


出典一覧

訂正履歴

  • なし(初版・2026年10月8日)
  • 2026年10月23日:目次を足しました(内容の訂正ではありません)。

関連記事

新しい記事